軸装という纏方

書と表具
とりわけ最近は軸装に興味を惹かれています。
実際に軸装は輸送に大変便利であり保管も額装に比べ容易です。
ただ近年それだけの理由ではなく軸装が表現する形式を含めて、その世界の奥深さを興味深く感じます。掛軸の様式は大きく分けて文人表具と大和表具の二種になると知ったのも実は最近のことです。文人表具は中国から伝わった形式で、言葉の通り大和表具は日本で考案されたものです。その日本の技と豊かな表現方法に興味が尽きません。
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「芽吹く兆し」
色目も含めてお正月に良さそうです。
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ライブMAAIで二枚のパネルを一つに描きました


興味を持つようになったきっかけは、やはりじかに表具師と出会うことにありました。
昔から助言くださる吉川さんも、大切な方で、一度きりと決めた再個展の折に
「なんで続けへんのや、買うてくれたひとのためにも毎年とは言わず、続けるべきや」と、後押ししてくださいました。老師の書を全てお願いしてきました。
後輩に表具師になった君嶋君、岡墨光堂で修行した彼との再会は思ってもいなかった方との繋がりにありました。案外世間は狭いものです。大切な復元修復にも携わっています。
そして、すぐ近くのギャラリーに所縁の表具師、東雲堂田村さんとの出逢いは、より表具に対する意識を深めさせていただきました。

今年ご縁あって海外の方々とのシンポジウムにご尽力いただき、職人としてのお人柄も含め、ライブで描いたパネルの直張りを、掛軸にしようとおもったのは、田村さんとの出会いにあります。

作品も多くの色々な表具師の方と出会うことで、広がりや深さが増すのではないか?と最近は考えます。
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まずお願いしたのは、傷みがひどくなった紙表装の小さな掛軸「棟方志功印集」。思いも寄らないことでしたが、出逢いとはそのようなものかもしれません。

田村さんは作品をご覧になって、語られる瞳がキラキラしていらして、彼の中ではもうすでに出来上がっているかのようでした。
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その出来上がった掛軸をいただいたすぐその場で今回のパネルの作品依頼をしました。二枚のパネルをご覧になって、田村さんはまたキラキラと瞳の奥を光らせて、こうすると面白い、とか、ここが難しいとか、仰しゃいながらパネルを持ちかえられました。

一言、「お時間下さい」と。

私はもうなんぼでもどうぞという気持ちでおりました。

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見えない部分に技術を凝らし時間をかけてこだわり全体像を仕上げる表具そのものが作品です。
時間を急かしてはできるものも出来ない、のは説明のしようがありません。
真っ白な紙の空間に想いを描いたその先にある表具。

パネルにアクリルのみ、もしくは素地のまま。お軸や額装様々な形で作品は仕上げられるのは言うに及ばず、なんの手も加えずそのまま、というのも空間の中で作品として存在可能でありましょう。

今回のように職人さんにとって一番美味しいところを楽しみ悩んでいただいて、私が描いたものが別の顔をして現れることは、たまらなく楽しみでなりませんでした。

描いた作品は描き終わった時点で作者を離れていますから、とはいえ自分好みの衣装を纏わせたいものです、学生時代はパネルの表具はしましたが、今はやはり表具師さんにお任せしたいとおもいます。
私の想像を超えて作品を生かして来てくださるからです。
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高野裂と一文字

数少なくなっていく紙や裂を使ってくださることもありがたいとおもっています。
将来的な判断は後の世の方がなさりましょうが、長く残すということについては、今自分にできることは惜しみなく、悔いなく行っておきたいと思うのが、軸装、という表現です。

今日は新しいく出来上がってきた掛軸には、
高野裂を使い、一文字に工夫を凝らした職人の経験の深さに感謝ばかり。
と、言うわけで
また、次のお願いをしてしまいました。
「實」これもライブで描きましたのでパネル直張り。パネルから剥がす作業はとても気を使う大変な作業やったとおっしゃっていらっしゃいましたが、また面倒な、というお顔は一つもお見せにならず、「三幅で中を細く……、全体は……」とまた楽しそうにしていらして楽しみでなりません。
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さて、氷室神社ご造替の屏風もまた、神社ご縁の別のところにお願いしてありますが、間も無く仕上がってくるとの報告を受け、屏風という彩りを纏った姿に早く出会いたいものやと思っているこの頃です。


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by sumiasobihito | 2018-12-07 17:21 | Comments(0)

生きている墨の美しさ、生かされていることの有難さ。表現者としての記録


by sumiasobihito桃蹊
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