私の自由時間 彫刻に惹かれる時(眼差しに逢いに)

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私は書を描きます。どうにもまとまりのない、自分でもなんで他の人たちのように上手に作品をまとめられないのかに悩んでいた20代の頃から、感じる描きたいものが彫刻や陶芸の世界にあることを最近再認識します。空間と質感に心動かされてやみません。
ご縁頂いただく方に彫刻家や陶芸家が多く、最近は音楽関係の方との出逢いも増えています。
彫刻家、橋本さんの言葉や制作の姿勢に心動かされながら、今回も何度目かの二科展に、彼の作品に出逢いたいと心に決めていた日の、私の自由時間のお話です

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私は朝から大阪市立美術館にいました。

橋本和明さんが出品中の「kanon」に逢うために、久しぶりに自由時間を、自分のためにとりました。

約束はしていたものの、何時何分というタイトなものではありません。
思っていたよりも早く着いてしまい、美術館までの僅かな道のりの間、珈琲を買い、あべのハルカスを見上げて、開催中の「北斎」展も後で行こうかなあ、でも、混んでるやろうなあ、など思いながら
すこし大きいサイズの珈琲を飲み干して
「多分行かないなあ、そうや、
動物園にでも行こう」と、成り行き任せで決めたら良いと思っていたのでした。

二科展 に伺うのはこれで3年目になります。

何故、ひかれたのかを思い返せば、……そう、
橋本さんのここ十数年に及ぶ、「kanon」と名付けれれた作品に逢うのはご自宅に伺った時も含めて5回目。
徹底して「余分なものを削ぎ落とす」中に「人間存在の本質に迫りたい」という彼の造形思考が、私がかつて教えを得た禅に似ていたからかもしれません。

「………人間がそこに立ち
只在るという そのことの不思議さと
その存在の美しさよ
言葉を無くし
心が深い闇に沈んでも 尚
凛としてある存在ー ひとすじの光のような

ふるえながら 立ち現れよ

そして

傷みをもつ その心に届け」Hashimoto Kazuaki Works 2009-2014より
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ただ漠然と、ぼんやりと作品を拝見しながら、いつか自分にとって心地よい角度に居て、いつものようにノートを取り出し鉛筆で感じたことなどを書きつけている間に
気づけば自分の制作のこと、日々のありようの気に入らないこと、例えば「どこかで私は所詮書家の書、という言葉に囚われ書家とは言いたくないと思っていることや、プロとは何なのか、生業とは何なのか、自分はどうなのか、と言った愚痴めいたことや人には聞かせられない様々の事」を11ページも走り書きしていたのでした。

『f』、(kanonをただ線で記したノートには『f』がいっぱい)を前に
強く懺悔でもしているようやなあ、と感じて間もなく
橋本さんからのメールに気づいて連絡すると、もう、彼はそこにいて、
それからは、Kanonのことや日常の話に時間が過ぎていったのでした。

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お昼でも軽く食べようと会場を離れて歩く道道でも、話は尽きず
どなたも目を惹くであろう今回の作品の頭部の破損のお話は興味深いものでした。完全でないものの姿、missing piece
私は、この姿が爆発的に過激に破壊された姿ではなく、自身でも想いもよらない損失を抱いた刹那の人の求める姿、missing pieceを感じていたのでした。橋本さんにうかがった、制作の事実、それはさらにこの作品を興味深いものにしました。
また、高村光太郎や井上有一の話など書の事も共有できる感覚がとても嬉しいことでした。

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また会場に戻って作家本人ともう一度
Kanon
の前に立ち、会話が途絶えてしまう瞬間も不自然な居心地の悪さはなく、そこには語りかけるkanonの眼差しとその声がありました。

普遍は、時を渡る
そう、作品はもう作者を離れていて、独り歩きをしています。
本当のところは、作ったものにしか わからない。
尽きないお話をお仕舞いにして、私はやはり動物園に行こうと思いました。


狼に逢いたい。カバにも。

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彫刻家戸津圭之介先生からいただいた、先生が愛してやまないあのカバ。なぜ、カバなのか?知りたいと思いました。

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ライオンやキリンの眼差しに逢いたい。

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それはまで逢ってきたばかりのkanonがそうさせているかのように、人の言葉を超えたところの、動物の眼差しから感じるものを確認したかったのかもしれません。
15年ぶり以上かもしれない動物園に、独り。
子らのためではなく家族のためでもない、私が観たい物を観たいだけ観ていました。
贅沢な私の自由時間。

棒のようになった足取りも軽く大阪の大都会を迷うことなく帰路に着いたのでした。


💧そうそう、橋本さんのシルバーの雫のお話は、また別の機会に










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by sumiasobihito | 2017-11-07 10:00 | Comments(0)

生きている墨の美しさ、生かされていることの有難さ。表現者としての記録


by sumiasobihito桃蹊
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